Making

制作過程

「nostalgia」 P100号 (2015年 白日会出品作品)

  • 2015年の第91回白日会展に出品した作品です。
    100号という大作なので下図を原寸の紙に描いて、それをトレーシングペーパーに写し取るという従来の方法ではなく、
    直接100号の画面にトレーシングペーパーを貼ってそこに下図を描きました。

  • トレーシングペーパーの裏に油絵具を塗り、表から線をボールペンなどでなぞることで画面への転写をしていきます。
    今回は画面の有色地が少し濃い色だったので黄土色(ローシェンナ)に加えて
    褐色(バーントシェンナ)も加えて色の調整をしています。

  • 褐色の濃淡だけでデッサンをした画面の上に白色系による明部の白色浮出を行っていきます。
    ここでは真っ白だけではなくて、
    暗めの白色から段階を踏んで明るくする階調を作っています。

  • 肌の明るい部分に白色を乗せていきます。
    前述の階調を使って、真っ白からではなく少し暗い白色からだんだん明るくしていきます。

  • 突然ですがテンペラ絵具を使うことになったので、その作り方を載せてみました。
    卵と油を使うのですが、
    要するにマヨネーズを作る工程と同じだと気づいてもらえたら面白いかもしれません。

  • 作り上げたテンペラメディウムをチタニウムホワイトのピグメント混ぜ合わせ、それを水で希釈して使うのが
    本来の姿ですが、ここでは画面にマチエールをつけるために少し変わった使い方をします。
    水を加えず練り上げたテンペラ絵具に同量の油絵具を混ぜ合わせ、テンペラと油絵具の混合の絵具を作ります。
    そしてそれをラップにとり、画面へと押し付けます。筆で描くだけでは得られないマチエールが出来上がります。

  • 怖い部分で切り取っていますが、カマイユが終わった段階から固有色を塗り始める工程です。
    絵具は「塗る」のではなく、薄く溶いたものを「かけて」、そして「刷り込む」ような感じで進めていきます。

  • 肌の暗部に「テールベルト」という暗い緑色を塗っていきます。
    テールベルトは西洋画の人物を描く際に顔の陰の部分に使われた絵具です。
    顔に緑は変な感じがするかもしれませんが、静脈の色などを考えれば結構青く見える色があると思います。
    その表現のための緑色です。

  • テンペラと油絵具の混合絵具で作ったマチエールを、カッターの刃を使って平滑にならしていきます。
    厚くなりすぎると将来割れるかもしれませんし、
    削れた部分に白い色が出てより複雑な風合いを見れるためです。

Youtubeでこちらの制作過程を一連の動画で紹介しています。ぜひご覧ください。
「大路誠 2015年 白日会展出品作品制作公開」